僕が心霊スポット巡りを引退した恐怖体験。

僕は以前、心霊スポットめぐりを趣味にしていました。というのも僕は霊感がまったくありません。産まれてこの方一度も幽霊を見たことが無いんです。

これまで出会った人の中には自称霊感持ちの人もいて、どんな霊体験をしたかというのを聞いたりもしました。

洗面台で歯を磨いていたら鏡に生首が浮いている姿が写った。修学旅行で写真を撮るとオーブらしきものがたくさん写ったなど、零感の僕には縁のない話でした。

若気の至りか分かりませんが、他の人に見えているモノが自分には見えない。一度でもいいから見てみたい。そんな思いが僕の心を動かし心霊スポットという場所へ足を運ばせたんだと思います。

でも、今回の事件をきっかけに僕は心霊スポットめぐりを引退することを誓いました。

心霊スポットでの恐怖体験

その日、僕は友人Yと一緒に次に行く心霊スポットを決めてルートなどの打ち合わせをしていました。

予定の場所は某施設の跡地。あまり名が知れていない場所ですが個人的には県内でもTOP3には入る心霊スポットというのは間違いないと思います。その施設を探索したあとは荒廃した地下に続く道を懐中電灯片手に探索していく…というコース。

このスポットには僕の知人も行ったことがあり、内部の様子はある程度事前に知っていました。知人曰くこのスポットは本気でヤバいことも。心霊ネタ鉄板の車についた子供の手形もバッチリ残っており、2度と行きたくない場所と聞いていました。

友人Yと打ち合わせをしている段階から「ここは見なかったことにしよう」「触らぬ神に祟りなしだね」といった弱気な声が漏れていましたが、肝っ玉は小さいくせにプライドは高い僕らは向かう事を決めたんです。

「次はぁ~、○○跡地。終点でぇ~す。」

スポットに着くまでの車内は非常に明るい雰囲気で、バスの運転手さんのモノマネをしてはしゃぎながら向かいました。

スポットに着くや否や、待ち受けていたのは大きなバリケードと手入れされていない生い茂った草々、前日の雨でぬかるんだ土。しんとした空気は夏の始まりの蒸し暑さを忘れさせ肌に触れる風は冷たく感じました。

「お先にどうぞ」

「いえいえどうぞどうぞ。」

「お前びびっとーと?」

「は?びびってねーし」

先程までの車内の盛り上がりは消え去り先頭の譲り合いで言い争うことで少しでもこの時が止まったような張りつめた空気をごまかそうとしました。

先頭の譲り合い戦争は妥協点をみつけ、お互い仲良く横並びで探索をすることに。

いざ中へと進むとこれまでの調子を取り戻し、夢中で探索を進めていきました。割れた窓、スプレーで落書きされた壁。どこから引きずってきたのかわからないマットレスの残骸。あたりはこれまで探索してきた廃墟とあまり変わらず少しだけ安心しました。

友人Yも同じ気持ちだったようで、もくもくと施設を探索しています。

「なぁ、ココ見て。」

その一言で僕は思い出しました。そう、この施設のメインは建物ではないことを。地下があったことを。

「これはいかんな。」

これまで張った虚勢は崩れ去り思わず本音がこぼれます。僕らが目の当たりにした地下へと続く階段は、月明りを吸い込み覗き込むとまるで深淵をみているようでした。

確実にナニかいる。そう確信出来るほどに恐怖を感じ、階段へ足を踏み入れることを躊躇しました。

思えば霊の存在を確かめたくて始めた「心霊スポットめぐり」。いざ直面するとこんなにも怖さを感じるなんて、お互いは階段から目を反らし固まったままの顔を見合わせていました。

 

ぉお…

 

ぉん…

 

これまで聞いたことのない異質な音が風の音と虫の鳴き声に混じり聞こえた気がしました。

「今、なんか言った?」

「いや、言ってないけど。」

友人Yの顔を見ると今にも泣きだしそうな顔をしていました。きっと僕も同じ顔をしていたでしょう。

 

っん…!

っおん!!

ザッザッザッザッザッザッザッザ!!!

 

音はさっきよりも大きくなり何かがこちらへと向かってきているのが確信出来ました。

 

「ッン!!」

「ワンッ!ワンワンッ!!」

 

え?ワン?

そう口にしながら声が聞こえる方へとライトを向けました。

 

「ワン!!」

「ワンワンワン!!!」

 

いっ

犬だぁー!!!!

しかも鎖繋がれてねー!!!来てる!!こっち来てる!!!!

それからの僕らは必死で逃げました。足がちぎれてしまうんじゃなかろうか、いや死ぬよりマシか。小学校、中学校で、50メートル走が最下位だったこと。ようやく8秒台を記録出来たのが高校生に上がってからだったな。そんな思い出の数々が走馬灯のように僕の頭を巡りました。

どれくらい走ったかわかりません。後ろからは「ワン!ワンワン!!」と威勢の良い声が聞こえてますし、ただただ走るしか僕らに手段は残されていませんでした。

ようやく入口のバリケードが見えてきたころです。「勝ったな」そう思った直後、前日の雨でぬかるんでいた土に足を取られ僕の視界は宙を回りました。24歳、盛大にコケました。

地面に寝ころび泣きそうな僕。泥だらけの僕の顔を覗き、満足げに帰っていく犬。腹を抱えて笑っている友人Y。

僕は思いました。「俺、こんな場所でなにしてんだろ。」と。

以上が、僕が心霊スポットを引退する決意を固めた理由です。これまで山中で鹿に遭遇することはあっても、犬に追われる展開なんて正直思っていませんでした。

一番怖いのは幽霊ではなく「日常に刺激を求めた人間の好奇心」なんですね。

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PS.思ったより傷深くて完治まで1カ月半ほどかかりました。

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